はじめに
『おもひでぽろぽろ』の中でも、
ひときわ印象的なシーンのひとつが――
「カレーライスの思い出」です。
一見すれば、家族で食卓を囲むありふれた日常。
でも、その場に流れていた空気や、タエ子が感じていたことを丁寧に追うと、
そこには記憶に刻まれる“感情の断片”が確かに存在していたことがわかります。
本記事では、「あの日のカレー」の場面から見えてくる
- 記憶の中に積もる感情のしこり
- 子どもが感じた小さな違和感や切なさ
- それが大人になった今のタエ子にどう影響を与えているのか
を丁寧に読み解いていきます。
「何気ない食卓の記憶」が、なぜあんなにも胸に残っているのか?
その理由を、あなたと一緒に探っていきましょう。
「あの日のカレー」に込められた空気感

カレーライスの思い出――
それは、タエ子が家族の中で「違和感」や「寂しさ」をはっきりと感じた瞬間でした。
食卓に流れていた、目に見えない緊張
- みんなが同じものを食べているはずなのに
- 会話は少なく、雰囲気はどこかピリついている
- 姉たちは落ち着いていて、母も静かにしている
そんな中で、タエ子だけが気まずさやプレッシャーを感じているように見えました。
なぜ「カレー」だったのか?
カレーは家庭的で、子どもにとっても“安心の象徴”のような存在。
それなのに、あの日のカレーはどこか味気なく、苦く感じられたのではないでしょうか。
- 自分のことを聞いてもらえない
- 間違いを責められる
- ひとりだけ疎外感を味わっているような気がする
それらの感情が、食事という日常の中でふいに噴き出した。
だからこそ、タエ子の記憶に深く残ったのです。
タエ子が感じた“言えなかった気持ち”

カレーの場面で印象的なのは、
タエ子が“何も言わなかった”ことです。
でも実際には、言いたいことがたくさんあったはず。
それを飲み込んでしまったことで、
その思いはより深く、記憶の中に刻まれることになったのです。
伝えたかった、本当の気持ち
- 「それは私のせいじゃない」
- 「ちゃんと説明したい」
- 「なんで信じてくれないの?」
そんな気持ちがタエ子の心の中に、
モヤモヤと渦巻いていたのではないでしょうか。
子どもが言葉にできなかったこと
大人の前では、子どもはつい黙ってしまいます。
泣くことも、反論することも、
“悪い子”と思われたくなくて、ただ下を向く。
タエ子はまさに、
「言えなかったけれど、ずっと心に残っている」という経験をしたのです。
その“言えなかった気持ち”が、
大人になった今も、彼女の中に静かに残っている――
それが、カレーの思い出の本質なのかもしれません。
記憶は感情とともに蓄積される

私たちは「記憶」と聞くと、
出来事そのもの――つまり“何が起きたか”を思い浮かべがちです。
でも実際には、記憶には
「どんな感情が伴っていたか」が強く影響しています。
タエ子の心に残ったのは“感情の重み”
カレーの一件は、ただの家庭内の出来事かもしれません。
しかし、タエ子にとっては
- 居場所のなさ
- 誤解された悔しさ
- 自分だけがわかってもらえない孤独感
こうした“消化しきれなかった感情”が、
出来事とともに記憶として蓄積されていったのです。
小さな出来事でも、忘れられない理由
大人になると、もっと大きな出来事をたくさん経験します。
それでも、なぜ子どもの頃の些細な記憶が残り続けるのか?
それは、そこに言葉にできなかった感情が閉じ込められているから。
“記憶”とは、心の深くに積もった感情の断片たちでもあるのです。
大人になった今、それをどう受け止めているか

物語の中でタエ子は、
大人になった今も、ふとしたきっかけで“カレーの思い出”を思い出します。
それは、まだその記憶と向き合いきれていなかった証拠でもあります。
向き合うことで見えてきたもの
田舎の自然の中で過ごす時間。
自分のリズムで暮らし、
他人と比べない日々の中で――
タエ子は、かつての記憶を
やわらかく思い出せるようになっていきます。
- 「あのとき、本当はつらかった」
- 「自分の気持ちを大事にしてもよかった」
- 「私は、悪くなかったのかもしれない」
そうやって、過去の自分を少しずつ癒していく時間が流れていきます。
思い出は、現在とつながっている
思い出すことで気づく、
「今の自分」にも残っていた影響。
でもそれは、決してネガティブなものだけではありません。
過去を理解することは、今の自分を肯定する一歩でもあるのです。
まとめ
『おもひでぽろぽろ』の中でも印象的な
「カレーの思い出」。
それは、タエ子にとって
単なる“食事の記憶”ではなく、
消化されなかった感情の記録でもありました。
小さな記憶に宿る、大きな感情
- 言えなかった気持ち
- 理解されなかった寂しさ
- 家族のなかで感じた孤独
そんな感情は、記憶の中で色濃く残り、
やがて彼女の“今”にも静かに影響を与えていたのです。
思い出と向き合うことは、自分を知ること
大人になったタエ子は、
その思い出を「忘れる」のではなく、
「受け止める」ことで、少しずつ自分を取り戻していきました。
私たちもまた、
過去の記憶を通じて“今の自分”に気づける瞬間があるのかもしれません。
だからこそ――
何気ない一皿のカレーが、人生の物語を映し出すこともあるのです。
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