1. 導入|「バルス」はなぜ、あれほど強く記憶に残るのか?
「バルス」──。
たった二文字のこの言葉が、日本中の記憶に刻まれている。
だが、それは単なる“滅びの呪文”ではない。
むしろこの言葉こそ、『天空の城ラピュタ』という物語の核心そのものだ。
「崩壊」=終わりの象徴
「バルス」=再生の始まり
この二重性を紐解くことで、『ラピュタ』の物語構造が立体的に見えてくる。
2. 「バルス」が象徴する“崩壊”とは?
「バルス」は、ラピュタを支えるシステムそのものを破壊する呪文だ。
- 巨神兵を含む軍事兵器
- 空中都市ラピュタそのもの
- 王族による支配構造
すべてが、バルスの一言で崩れ去った。
しかしそれは、単なる破壊ではない。
「人類が手にするべきではない力を、ここで断ち切る」という決断の象徴だ。
バルスは、「終わりたい」と願った“過去そのもの”を壊す呪文だった。
3. なぜ“言葉”ひとつで崩壊したのか?

呪文──つまり「言葉」がもつ力。
バルスが効果を持ったのは、
それが“王族の意志”による正式な命令だったからだ。
- シータとパズーの合意=王権の発動条件
- 古代ラピュタ文明において、“言葉”はコードであり鍵だった
- 「選んだ者」の声だけが、世界を変えられる
ここで重要なのは、「言葉の意味」と「言葉を発する覚悟」が一致していた点。
バルスは、王族の“力”ではなく、“選ぶ覚悟”によって発動された。
4. 「滅び」とは同時に“断絶”であり“継承”でもある

バルスによって破壊されたのは、“力”で築かれた王国だ。
だがそれによって守られたものもある。
- 武力や支配の象徴=崩壊
- それを終わらせる覚悟=残る
- そして地上の世界に、新たな選択肢が残される
つまり、「終わらせること」が「継承の更新」になる。
古い王権の断絶は、“未来への余白”でもある。
バルスは、過去を断ち切ることで“新たな物語”を始める言葉だった。
5. バルスを“唱えたのが二人”だった意味とは?
注目すべきは、バルスを唱えたのが“シータ一人”ではなかった点だ。
- 王族の末裔であるシータ
- 一介の少年であるパズー
- この“二人”が揃って唱えたときにだけ、呪文は発動した
ここには象徴的な意味がある。
- シータ=知・血・王権
- パズー=意志・庶民・未来
- この“共闘構造”があってこそ、「バルス」はただの破壊に留まらなかった
バルスとは、“権力の一極集中”ではなく、“対話と合意による崩壊”だった。
6. まとめ|「バルス」は滅びではなく、“自由になるための再生”だった

「バルス」は確かに、すべてを壊した。
だがそれは、呪いでも怒りでもなかった。
- 支配の構造を終わらせる意志
- 歴史の断絶による“希望の更新”
- そして、過去の遺産に頼らず“生きていく”という決意
それが「バルス」の本質だった。
バルスは、破壊の言葉ではない。
“自由を取り戻すための言葉”だったのだ。
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